高校生による白神山地縦走の記録

 (参考)
(体験記) 白神山地に競う
 ~全県総体登山競技に参加して~
平成2年6月8日~11日 三泊四日 
能代工業高校山岳部 大坂秀一 

グループ筏発行 季刊筏(いかだ)24号
特集「白神山地」に掲載


   


  
 今年の全県総体登山競技は、6月8日から11日まで白神山地(十二湖・白神岳・真瀬岳)で行われました。全県より20高校、58パーティ、選手222名が参加しました。大会の後半は雨に降られ、特に9日の夜はどしゃぶりでテントの中までびっしょりになりました。幸いにも、十二湖から白神岳への登りではほとんど雨に降られず、岩木山、二ツ森、森吉山などがかすかに見ることができました。また、日本一といわれるブナ原生林もガスの中に、ぼんやりとですが見ることができました。私たち、能代市内の高校の山岳部員にとって、白神山地は活動のベースであり、四季を通じて登っていますが、全県の高校山岳部がこうして白神山地に集まって技術を競い合ったことは大変よかったと思います。
 登山競技は登山の技術を競うもので、200点満点で審査されます。配点は次のとおりです。体力(登る速さを競う)50点、一般技術(計画、記録、ザックへの荷物の入れ方などをみる)10点、装備(持ち物は適当か)20点、読図(現在地を地図に記す)40点、観察(植物の名前)10点、キャンピング(テント生活がきちんとなされているか)10点、気象(天気図を書いて、明日の天気を予想する)20点、ペーパーテスト(登山の知識を問う)20点などです。

大会1日目(6月8日)
 11時40分、開会式の会場である岩崎村総合スポーツセンター到着。すでにたくさんの選手が集結、昼食をとったり、これからはじまる競技の準備をしたりしていました。12時10分、開会式、大会会長、来賓のあいさつ、能代北高の生徒会副会長の素晴らしい歓迎のあいさつ、選手宣誓、審査員・役員の紹介などがあり、いよいよ競技に入りました。最初はペーパーテストです。パーティごとに集まり、協力して登山の知識の問題を解きます。むずかしい問題も多くありました。午前中は曇っていた天気がしだいに晴れてきて、気温も上がっていきました。今日はこの暑さの中でタイムを競わなければなりません。隊列を組んで、スポーツセンターを出発、 国道を横切り、タイムレースの出発点である桐ノ沢集落に向かいます。スタートの合図で、かけ声を出して一斉にかけ出しました。登山靴をはいて、16~20kgのザックを背負って走るのは大変ですが、速いほど得点が高いので、みんな必死です。しばらく畑の中を行くと、造林杉の中に入ります。いくらか涼しく感じます。造林杉から雑木林にかわります。途中から古くなって使われていない水路のわきを行きます。途中、数カ所で読図をします。周囲の地形をみて、2万5千分の1の地図に現在地を記します。これも登山では大事な技術です。中ノ池、ビジターセンターを過ぎ、スタートしてから約1時間30分で長池キャンプ場に到着。読図用地図を提出して水を飲み、しばらく休みました。キャンプ場には立派なログハウスが建っています。周囲はブナ、ミズナラ、サワグルミなどの樹木で緑一色です。しばらくして、役員の指示でテントを設営。地面が砂利で固く、テントを張るのに決してよいとはいえません。気象係が集められ、天気図を書いています。残った3人でテント内を片付け、炊事にとりかかります。夕食後、地元岩崎村役場の方で、白神山地に詳しい西口正司さんのお話がありました。白神岳や登山の心構え、そして自然保護について話されました。その後、審査員よりこの日の採点済みのペーパーテスト、読図、天気図が返されました。一喜一憂し、明日にそなえて午後9時にシュラフに入りました。

大会2日目(6月9日)
 午前4時起床。今日は今大会で最もハードな十二湖から白神岳への縦走です。どんよりした曇り空。さっそく朝食の準備。他のパーティもほとんど起きて、あわただしく準備をしています。朝食後、テントを撤収し、パッキングをします。女子は5時30分出発しました。男子は6時出発です。重いザックを背負い、スタートラインに整列し、一斉のスタート。白神岳山頂までのタイムレースです。所要時間で得点差が大きくなるので、鶏頭場ノ池までの林道はほとんどのパーティが走っています。青池を過ぎ、大崩への急な登りです。足下には、ニリンソウ、クルマバソウ、エンレイソウ、シラネアオイが咲いています。今日はあまり暑くないので、比較的楽に感じます。大崩付近でメンバーの一人が体調をくずしたので、しばらく休んで、荷物を分け合い、ザックを軽くしてやって、あきらめずに登り続けました。崩山からは岩木山がかすんで見えます。雨が降らないことを願いながら、ブナとササやぶの中を進みます。スタートして3時間半でトップのパーティは山頂に着きました。私たちのパーティはだいぶ遅れてしまいましたが、最後まで頑張ろうと励まし合いながら、山頂をめざしました。ここは、体力の配点が大きく、かなりの点差をつけられたことになります。山頂で展望の審査(周囲の山や沢の名前、標高などを聞く問題)をおこない、観天望気(雲、気温、風の変化から今後の天気を予想する)を書いた用紙を提出しました。頂上付近は寒く、雨も降ってきました。雨具を着て寒さに耐えながら昼食をとり、しばらく休んでから下山しました。低灌木からブナ林に入ったころから雨が激しく降ってきました。下りはスムーズに歩くことができました。ミツバオウレンやツクバネソウなどが咲いています。水場でおいしい水を飲んで、3時ごろ白神平に到着。バスで八森キャンプ場に移動。雨は相変わらず激しく降り、土砂降りの中でのテント設営になりました。テント内で早速バーナーに火をつけ、ぬれたものを乾かしました。ここで観察の審査がおこなわれました。これは、植物の名前を聞く問題です。夕食を食べ、早めに眠ることにしました。体は疲れているのですが、フライを打つ雨の音と波の音がうるさくて眠れませんでした。

大会3日目(6月10日)
 激しく降っていた雨が朝には小降りになりました。今日はバスで青秋林道入口付近まで移動し、そこからスタートして真瀬岳を往復します。サブ行動(小さなザックを背負って歩く)なので、きのうよりは楽です。スタート地点では雨はやんでいますが、曇り空で今にもまた降り出しそうです。トップから22分遅れると得点がゼロになってしまうので、頑張らなくてはいけません。6時50分、スタート。一斉に走り出します。しばらく走り、疲れると歩き、回復するとまた走ります。50分くらいで林道の終点、真瀬岳登山道入口に着きました。登山道は雨ですべりやすく、登るのが大変でした。一週間前に下見で登ったときは登山道にササがおおいかぶさり、歩きにくかったのですが、地元の方が刈り払いをしてくれてあったので楽でした。造林杉の林をぬけ、ブナ林にはいると頂上が間近です。少しバテぎみでしたが、7番目で頂上に着きました。周囲はガスでまったく見えません。読図の地図を出して、少し休んでから下山しました。滑りやすいので、下りは危険です。後続のパーティとすれ違うのが大変でした。林道に出たところで、装備の審査がありました。全ての審査が終わり、テント交流をしました。キャンプファイアをおこなう予定でしたが、風が強くて中止になりました。他校のテントを訪問したり、自分のテントに招いたりして楽しみました。大会でもっとも楽しいひとときです。テント交流は夜遅くまで続きました。

大会4日目(6月11日)
 今日は指導講評と閉会式です。岩崎村総合スポーツセンターの体育館に8時に集合。審査員の方から、審査の状況や注意すべきことなどの話がありました。閉会式では、成績発表がありました。私たちのパーティは十二湖から白神岳への登りで体調をくずしたことが大きく減点され、31パーティ中8位に終わりました。男子上位2パーティと女子1パーティは宮城県で行われるインターハイに出場します。
 天気に恵まれず、日本一のブナ原生林を全県の山岳部員にぼんやりとしか見てもらえなかったことが残念でした。天気のよいときに、ぜひまた登ってほしいものです。



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