高校生による白神山地縦走の記録



釣瓶落峠~尾太岳~冷水岳~藤里駒ヶ岳 
平成4年3月27日~30日 三泊四日 
能代工業高校山岳部 

   
冷水岳手前から藤里駒ヶ岳  藤里駒ヶ岳山頂にて 



※平成4年4月25日付 北羽新報掲載より


 白神山地縦走の記録
釣瓶落~尾太岳~冷水岳~駒ヶ岳 


 


 ~はじめに~

 能代工山岳部は、春山合宿を毎年白神山地で行っています。3年前は白神岳から真瀬岳まで、2年前は八森から焼山、素波里まで、昨年は黒崎から白神岳往復をしました。そして、今年は白神山地の東部,藤里の釣瓶落峠から尾太岳、冷水岳、藤里駒ヶ岳まで、二泊三日で縦走しました。好天にも恵まれ、快適な山行を満喫できました。


 ~行動記録~
3月27日(金)
 雲ひとつない好天の中、午前8時30分に学校を車で出発。途中、藤里の鎌田さんから釣瓶落峠の様子を聞き、早飛沢に向かった。ここから歩く予定だったが、幸いにも除雪をしている会社の人がジープに乗せてくれ、3kmほど林道に入ったところから、10時25分に歩き始めた。約30分以上、時間を稼ぐことができたことになる。林道とはいえ、まだ1mを超える積雪で、20kg近いザックを背負っているのでワカンをはいていても足がとられ、とても疲れる。造林杉の中を進むと、まもなくカモシカが歓迎してくれた。この日、歩いた距離は約15km、6回くらい休息をとり、午後4時45分やっと予定の釣瓶落直下に到着。さっそくテントを張り、夕食の準備。夜、満天の星空で冷え込んできている。明日に備えて、早めにシュラフに入る。

3月28日(土)
 朝、5時起床。テント中で朝食の準備をする。ガアガアという音で、外を見ると白鳥がVの字になって北に飛んでいく。今日も雲ひとつない快晴。午前7時35分出発。今日は釣瓶落峠から尾太岳までの長丁場だ。林道を県境近くまで行くと、釣瓶落トンネルがある。ほとんど雪に埋まっている。がけのため県境の稜線にたどり着けず、しかたなく稜線に通じる右側の尾根に取り付く。この尾根はやせて細く、しかも傾斜が大きいため、ザイルを固定して、そのザイルを頼りに、やっと稜線にたどり着く。予定より1時間ぐらいの時間のロスになってしまった。
 この付近はヒバやゴヨウマツが主で、ブナはほとんど見ることができない。秋田県側は深い沢になっている。雪庇を踏み外さないように西に向かう。右側に岩木山、正面に尾太岳がだんだん近づいてくる。
 12時30分、936mの三角点で昼食。振り返ると、遠くにかすかに八甲田山、田代岳、また東に延びる県境の稜線が見える。この付近のブナはあまり注目されていないようだが、青森県側はすごいブナ林である。残念ながら秋田県側は伐採されてほとんどない。3時30分、尾太岳に通じる尾根が延びる1059mのピークに到着。これからどうするか少し迷うが、ここにテントを張り、サブザック(小さいザック)に必要最少限の荷物を入れ、尾太岳を往復することにする。45分ぐらいで尾太岳にたどり着けると思ったが、思ったより遠く約1時間かかった。
 4時50分、念願の尾太岳到着。山頂部はコメツガの群落になっている。岩木山と弘前市が間近に見える。日も暮れてきたので記念撮影をして引き返す。途中で夕焼けになり、日が沈み、テントに着いたときは薄暗い。すっかり疲れてしまったが、雪を溶かして水を作り、夕食を作る。二ツ井あたりの夜景がきれいだ。だいぶ冷え込んできた。メンバーの一人が風邪のためか吐き気がするということで、早めに休む。

3月29日(日)
 朝、5時起床。今日も素晴らしい天気だ。駒ヶ岳が美しい山容を見せている。東側が切れ落ち、2年前の夏山合宿の白馬岳を思わせる。体調をくずしていたメンバーが今朝になって快調とのことでほっとする。午前7時30分、出発、冷水岳をめざす。左に駒ヶ岳、右に岩木山と尾太岳、正面に白神岳の稜線と最高のコースだ。途中にクマゲラが、餌を採ったと思われる大きな穴のあいた枯れ木がある。
 11時40分、冷水岳に到着。駒ヶ岳や田苗代湿原が間近に見える。冷水岳と駒ヶ岳の鞍部で昼食。エネルギーを蓄えて、標高差300mの駒ヶ岳の登りに挑む。ウサギが私たちの目の前を駆けていく。あえぎながらもほとんどノンストップで山頂に着く。山頂からは360度の大パノラマで、白神山地の雄大さと日本一といわれるブナの多さに驚かされる。
 しばらくして下山。馬の背への下りはかなりの傾斜で、キックステップでジグザグに下る。1078mのピークから目指す尾根へ通じる部分の雪面には大きな亀裂が入っており、今にも雪崩が起きそうで緊張する。沢を大きく横切り、やっとの思いで目的の尾根にたどり着く。ここからはただ下るだけ。次第にブナが杉に替わってくる。神社にでも生えているような太い天然杉がたくさん見られる。快晴だった空に薄い雲が出てきた。
 午後5時、701mの三角点付近に幕営することにする。夕食後、みんな疲れているのか、早々とシュラフに潜り込む。10時ごろから雨が降り出した。1日遅れであったら大変だっただろうと思いながら眠る。

3月30日(月)
 かなり強い雨の音で目がさめる。雨具を着て、午前8時23分出発。杉林のため視界がきかず苦労したが、約2時間で林道に出る。予定より、だいぶ右側にずれたところに降り立つ。途中の沢で冷たい水を飲んだりしながら、かなり速いペースで林道を下る。三日前より積雪量が30cmほど少なくなっている。12時頃早飛沢に到着、遅れている先生を迎えに行く。ほっとしたみんなの顔は、日焼けで真っ黒だ。

 今回の春山合宿は、四日間のうち三日間が快晴という好天に恵まれ、本当に素晴らしい合宿となりました。女性的な尾太岳と、標高が1158mと比較的低いのですが、男性的で私たちを圧倒するかのような駒ヶ岳、そしてはてしなく続くブナ林の美しさには感動させられました。このような素晴らしい山々が私たちの地元にあることを本当にうれしく思いました。
                                    3年 近藤良幸 記

     
尾太岳から冷水岳をめざす  尾太岳から冷水岳の稜線  尾太岳 



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